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ベアト総受け小説企画ブログです
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*これは戦人×ベアトリーチェの物語である。
*原作的な意味での死にネタが存在する。よって傾向は切なめである。






<それはまるで寓話のように>




ゆらゆらと、意識が漂流する。
文字通り「漂流」だ。
なぜならここは海なのだから。
辺りは闇。
上も下もなく、右も左もない深海。
くらげのかわりに浮遊するのは無数のカケラたち。
ここでうまれ、還るカケラ。
そして私もここにかえってきた。
望みを断たれて、かえってきた。
肉体を失ったにも関わらず
(いや、もとより肉の楔からは解かれているのだが)
ひとすじのなみだが頬をつたう。

いったい私は、妾は、何のために顕現したのだろう。
たどる意識はおぼろげで、少しずつ霧散してゆく。
きえていく。

きらきらときらめくカケラの海。
その中のひとつが、すうっと、音もなく。
かつて黄金の魔女の名をほしいままにした、
無力な女の前に滑り出た。

カケラに映った男は泣いていた。
彼の泣き顔を見るのは初めてではない。
何度も見てきた。数え切れないほどに。
それは、かつてさまざまな感情を呼び起こしてくれた。
よろこび、いたみ、くるしみ。
カケラに映った男は泣いていた。
はじめて見る泣き顔だった。
男は、だれかの名前を呼んでいた。
間に合わなかったと嘆いていた。
だれかに、謝っていた。
何を謝ることがあるのだろう。
彼はゲームに勝利した。
ただ、それだけのことなのに。

奇跡は起きない。
彼が愛した魔女はこわれていく。
ゆびのさきから、すこしずつとけていく。
愛されなかった人魚のように。
うまれた海にとけていく。
姿がきえるさいごのときに、彼女はそのカケラを抱きしめた。
奇跡は起きない。
魔女は蘇らない。
ならば、さよならのかわりに。
彼にほんの少しの救いを――。

そうして、ベアトリーチェはいなくなった。






「っていう夢を見てよ」
「勝手に殺すでない!妾はこの通りぴんぴんしておるわ!」
「だよなぁ」

やけにはっきりとした夢だった。
尚もぎゃあぎゃあと喚く黄金の魔女に、戦人はそっと手を伸ばす。
てのひらには、やわらかい感触。

「こら、やめろ。くすぐったい」
「ん、悪い」

大丈夫だ。ベアトはここにいる。
そんな当り前のことに、何故だかとても安心して。
嬉しくて。
胸の中から込み上げる何かを隠すように、そのまま腕に抱いた。
見上げてくるのは訝しむ魔女。

「戦人?どうした?」
「なんでもねぇよ。もうちょっとだけ、こうさせてくれ」
「くくく、妾は高いぞ?」

そうして、ベアトリーチェは戦人に身をあずけた。
腕のなかの魔女は、あたたかかった。







「――さん、大丈夫ですか、戦人さん」
「ん、ああ」

少し眠っていたらしい。
俺が起きたことを確認すると、ほったしたのだろう。
目の前のベアトリーチェの表情が緩んだ。
夢を見ていた気がする。
何か、とてもしあわせな夢を。
思い出せないのがもどかしいくらい、しあわせな夢を。
ふと頬に違和感を覚え、指で拭う。
そこで初めて、自分が泣いていたことに気がついた。






おわり。






*あとがき*
ハピネス救済のための夢オチのはずが胡蝶オチになりました。
結局救済されてないですね。
よんでくださってありがとうございましたww
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