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ベアト総受け小説企画ブログです
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戦人×ベアトリーチェ







 ここは魔女の館。今日も今日で、唯一のテレビからはホラー映画が流されていた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
「ひぅっ!!」
 不気味な女の霊の登場に、ベアトはソファーの上で縮こまった。
「いっひっひ。またそんなに怖がっちまって。黄金の魔女が聞いて呆れるぜぇ?」
「わ、妾は怖がってなどおらぬ!」
 隣りに座る戦人にからかわれて、ベアトはむっとした表情を見せた。
「ただ……ほんのちょっぴり、びっくりしただけだ!」
「へぃへぃ」
 にやにやと笑う戦人。
「じゃあ、夜中に、一人でトイレいけるよな?」
「なっ!? 妾をそこまで馬鹿にするか!」
「おっと、そいつは悪かったな」
「まったくだ。小さい子どもではないのだぞ」
「そうだな……それじゃあ、さっきから、足をもじもじさせてるのはなんだ?」
 戦人の指摘を受けて、ベアトの頬はみるみる赤く染まった。
「あ、いや、これは……」
「まさか、トイレに行くのが怖くって、我慢してたりしないよなぁ?」
 挑発的な戦人の言葉に、ベアトもすかさず反論した。
「馬鹿を言うな! これはあれだ。その……映画がいいところだったから、ちょっと我慢してただけだ」
「あぁ、そいつは悪かったな。じゃあ、一時停止しとくから、トイレに行ってこいよ……一人でな」
「言われなくても!」
 勢いよくベアトは立ち上がった。
「……気をつけろよ?」
 急に真剣な口調で戦人が呟いた。
「な、なにをだ?」
 思わず振り返ったベアトの視線の先には、どこか楽しそうな戦人がいた。
「いやぁ、廊下は暗いから、足元とか……な。なにか”いる”かもしれねぇし」
「そ、そんなわけあるわけなかろう! このバカラっ!」
 ベアトはそう啖呵を切ると、勢いよくリビングを飛び出した。
「…………暗い」
 だが、扉を閉めたところで、ベアトは固まってしまった。
 目の前には、暗闇へと続く長い長い廊下。ところどころに明かりはあるが、全てを照らし出すことはできていない。光の届かぬ場所は真っ暗で、まるで暗闇に溶けてしまっているかのようだった。
「むぅ……なぜ、この屋敷はこんなにも暗いのだ……」
 ベアトが踏み出す一歩を躊躇していると、不意に肩を叩かれた。
「ふわっ!??」
 振り返ると、それは戦人だった。
「ん? どうしたんだ? ベアト?」
 聞き返す声も、どこか楽しそうである。
「ば、戦人か。別に、ちょっとびっくりしただけだ」
 自らの心臓の鼓動を聞きながら、ベアトは努めて冷静に言った。
「ふぅん。そうか」
「な、なんだっ。なにをニヤニヤしているっ」
「いや別に。それより、どうしたんだ? こんなところで立ち止まってよ?」
「う、うるさいっ」
 威勢良く出てきた手前、暗闇が怖いなどと、言えるわけもなかった。
「トイレの場所でもわからなくなったのか? しょうがねぇなぁ。ほら、こっちだぜ」
 そう言うと、戦人はベアトの手をとり、歩き出した。
「ば、戦人、なにを?」
「トイレまで案内してやろうってんじゃねぇか」
「いや、そうではなく、この手は……?」
「嫌なら、手を離していいんだぜ?」
「む、どうしてそなたは、そういうことを……」
「ん? 手、離さないのか?」
「ふん。妾は、戦人のことを嫌ってるわけじゃないのだから、特に手を離す必要もないわ。別に、怖いからとかではないのだからな」
「へぇ。そうか、ベアトは俺のことを、手を握られてもいいくらい好きってことだな?」
「ふぇ!?」
「俺になら手を握られても構わないって。そういうことだよなぁ?」
「いや、それは、その、あの…………ほ、ほら、さっさと行くぞ!」
「いっひっひ」



「……眠れぬ」
煌々と明かりの灯った部屋で、ベアトは極上の羽毛上掛けに包まれながらも、眠気を感じられずにいた。
 眩しいほどの明かりが頭上にあるのだから、それも当然なのだが、さらに、部屋の隅やちょっとした物陰が気になり、眠りに落ちるのを妨げているのだった。
「むぅ……これも戦人が、あんな映画を見せるからだ。まったく」
「ん? 呼んだか?」
「んなっ!?」
 聞こえるはずのない戦人の声に、ベアトは跳ね起きた。
 声のした方を振り返れば、戦人が扉から忍び込んでいるところだった。
「いっひっひ。ベアトの寝顔が見たくなってな。まさか起きているとは思わなかったけどよ」
「……こんな時間に婦女子の寝室をノックもせずに訪ねるとはイイ度胸じゃねぇか。串刺しにされる覚悟はあるんだよなァ?」
 ベアトの端正な顔が美しく歪んだ。
「いでよっ――」
「一緒に寝てやろうか?」
「な!?」
 思慮外の提案に、ベアトは驚きの表情で固まった。
「どうせ、怖くて眠れなくなってたんだろ? 優しい俺が一緒に寝てやるぜ?」
 戦人は飄々と告げた。だが、ベアトは戦人の言葉に、顔を赤くして反論した。
「わ、妾がお化けごときを怖がるとでも思ってるのか! あんな、かやことかいう霊など怖くないわ!」
 言って、ベアトは少し後悔していた。どうしてこんな時に、意地を張ってしまったのだろうかと。
「あ、幽霊って呼び捨てにされると怒るらしいぜぇ?」
「!!!」
 追い討ちを掛けるかのように、戦人の言葉は、別方向からベアトの心を追い詰めた。
「……ふ、ふん。そんなの知らぬわ……」
 虚勢を張る声。だが、どこか泣きだしてしまいそうな子どもの声のようでもあった。
「かやこ……さん……なんて、本当に怖くないのだからな!」
「そうか……じゃあ、俺は部屋に戻るぜ」
 くるりと踵を返す戦人。
「わ、あ、戦人……」
 ベアトは思わず呼び止めていた。
「ん?」
「む……んむぅ……なんでもない」
 うつむいて、そう告げるベアト。
「じゃあ、どうして、俺の服を引っ張っているんだ?」
 戦人のいうように、ベアトの右手は、戦人の背広の裾をしっかりと掴んでいた。
「あ、いや、これは……」
 ベアトの頬が朱に染まっていく。
「これは?」
 戦人はただ聞き返す。そうすれば、この魔女は幼い本音をもっと出してくれると知っているからだ。
「い、一緒に……その、だな……うぅ……」
「なんだ? はっきり言わねぇと、俺はもう帰っちまうぜ?」
 すでに満足気な表情の戦人。対して、ベアトの瞳は羞恥で潤んでいた。
「一緒に…………寝てくれ」
「いっひっひ。しょうがねぇなぁ」
 待ってましたと言わんばかりに、戦人はすぐさま背広と靴を脱ぐと、ベアトのベッドへと潜り込んだ。
「こら。あんまり、ひっつくでない」
「いいのかぁ? 隙間があると、布団の中から出てくるかもしれねぇぜ?」
「なっ!? どうして、お前はそういうことを!?」
 それはもちろん、今この瞬間のベアトの表情を見る為である。
「だから、ほら、もっとくっつけよ」
「む……むぅ」
 意外と素直にくっつくベアト。ちょうど、戦人の腕枕で、頬を戦人の胸元に寄せるような形になった。
『く~っ。やっぱりベアトはかわいいなぁ。さて、ここからどんなイタズラをしてやるかなぁ。いっひっひ』
「……って、え?」
 見れば、戦人の温もりに安心したのか、ベアトはすとんと眠りに落ちていた。魔女とは思えないような、あどけない寝顔に、戦人の邪念も吹き飛ばされてしまった。
『ちぇっ。こんな気持ち良さそうに眠られちまっちゃあなぁ……』
「とりあえず、こんだけ」
 そう呟くと、戦人はベアトのおでこにチュッと口づけた。
『おやすみ。怖がりで愛しい俺の魔女』


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