「退屈ね。」
「うむ、そうであるな。」
長い漆黒の髪の魔女と黄金の髪を結わえた魔女が、淡くハーブの香りのする紅茶を啜りながら呟いていた。
「死んじゃいそうだわ。ねぇベアト、なぞなぞごっこしましょう?」
「む?なぞなぞか、よいぞ」
コトリ、と音を立てながら奇跡の魔女の名を持つ少女、ベルンカステルはティーカップを置いた。
そして二人の間に積まれたクッキーの山からひとつを手に取ると、小さく一口かじった。
「ねぇベアト。"音のない世界"に音を生み出すことって、出来ると思う?」
かじったクッキーを眺めながらくすりと笑った。
「それはなぞなぞなのか?」
「くすくすくす、どうかしら。なぞなぞであってなぞなぞではないわね。」
退屈そうだった顔が一変し、大人をからかって楽しんでいる子供のように唇の端を吊り上げた。
対する無限の魔女、ベアトリーチェは少し困った顔をしながらそれに応じた。
「むぅ。そなたなら成せるのではないか?」
ベアトリーチェはベルンカステルの気を伺うように言った。
しかしベルンカステルはまた少しつまらなさそうな目をした。
「私はそんなことを聞いてるんじゃないわよ。」
「というと?」
ベルンカステルは、はぁ、とため息を付きながら机に頬杖をついて足をぶらつかせる。
「正解は"音のない世界"に音を生み出すことは出来ない。その世界の存在定義が"音がないこと"だから。
音が生まれればそれは"音のない世界"ではなくなるでしょう?」
それを聞いたベアトリーチェは一瞬きょとんとすると、くつくつと笑いだした。
そしてベルンカステルと同じように頬杖を付いた。
それを見たベルンカステルは少し怪訝そうな顔をして頬杖をやめた。
「くっくっく、そういうことか。まったくベルンカステル卿らしい問いであるな。」
「………どういう意味よ。」
「いやいや。お気になさるな。ではベルンカステル卿よ。」
「なに?」
嫌そうな顔をしながらも、興味を持ったようだ。
「"色のない世界"とはどのような世界だと思うか?」
「"色のない世界"?真っ白な世界、とか?」
「それは"白"という色であろう?本来は白や黒は色には入らぬと言われておるがな。
名が在る時点で色とも見なせるであろう?」
楽しそうにベアトリーチェはクッキーを摘んだ。
ベルンカステルもくすりと笑い、かじりかけのクッキーを口の中へ片付けた。
「つまり、目に見えるかも分からないわけね。」
「色や音が存在するという概念を覆せば、それは忽ち違ったものになってしまうからな。」
小さな部屋に二人の魔女の笑い声が小さく響いた。
かちゃ、とどちらかがティーカップを持ち上げた音が、それを遮った。
「ねぇ、私はあなただけの世界が見てみたい。」
「む?」
「でもこれは"音の無い世界"と同じね。あなたしか存在できないのだからあなたしかその世界を見ることはできない。
私は傍観者で在ることさえ許されない。」
ベルンカステルは紅茶を飲み干すと、かたりと音を立てて席を立った。
「じゃあね、ベアト。なかなか有意義な時間だったわ。
次来るときは梅干し紅茶を用意しておいてね。くすくすくす。」
奇跡の魔女は小さな笑い声だけを残して消えた。
アイロニカルガール(それはただのお茶会で、)end
*あとがき
はい、締め切りを2時間10分過ぎたところです←
またよく分からない話ですね
気にしません
気にしません
なに言われても気にしません
大事だから三回言いました
それではw
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